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親が高齢になってくると問題になるのが「空き家問題」です。
親の高齢化や認知症の発症などによって、マンションや高齢者施設への引っ越しなどに伴い空き家が生まれ、その管理に頭を悩ませることになります。
空き家問題の主なデメリットは次のとおりです。
空き家を所有するだけで固定資産税と都市計画税の2つの税金がかかります。
また、次のケースに1つでも該当する場合、「特定空き家」に認定され、固定資産税が6倍、都市計画税が3倍になる可能性があります。
ゴミが散乱している場合、特定空き家に認定される可能性があります。
ここでいう「ゴミ」とは、空き家の所有者のゴミだけではなく、不法投棄や倒木も含むので、特定空き家に認定されないためには定期的な管理が必要です。
不審者の侵入、シロアリや動物の繁殖などの場合、近隣住民からの苦情によって特定空き家に認定される可能性があります。
老朽化した建物によって、周囲の美観を損ねている場合も特定空き家に認定される可能性があります。
美観を損ねて特定空き家に認定されないためには、定期的に建物の修繕と庭の雑草の伐採をする必要があります。
建物の老朽化によって倒壊する可能性がある場合、特定空き家に認定される可能性があります。
国土交通省の調査によると、平成27年から令和元年度までに特定空き家として助言・指導を行った件数は19,029件にものぼります。
電気代や水道料金等は、契約を解除していなければ料金が発生します。
また、一戸建てやマンションであれば、補修費用や管理費等がかかってしまいます。
その他、遠方に住んでいる場合、移動費等がかかってしまいます。
空き家は、人が実際に住んでいる家に比べ確実に早く老朽化していきます。
老朽化が進むことで資産価値が大幅に下がり、安価での売却または解体することになります。
一度老朽化してしまった不動産は大規模な修繕をしなければ元に戻す事はできません。
また、解体した場合は多額の費用がかかってしまいます。
空き家問題の防犯リスクとして次のことが考えられます。
空き家は放火されるリスクがあります。
特に長年放置してゴミがたまっている場合など、所有者の「重過失」によるものと判断された場合、損害賠償を負う可能性があります。
管理が行き届いていない空き家は、一般的な住宅と比べ空き巣の標的にされやすい傾向があります。
誰も住んでいない空き家は、誰のものではないと思われがちです。
そのため、ホームレスなどにより不法占有される可能性があります。
その場合、家財道具を勝手に使用されたり、不法投棄によって害虫の発生を誘発する恐れもあります。
認知症の方が所有している不動産は、原則として売却することも貸し出すこともできません。
近年、親が認知症を発症し、不動産の売却資金を高齢者施設の入居資金にしたいという需要が増えています。
しかしながら、認知症と判断されると「判断能力がない」とされ自由に不動産を売却することや貸し出すことができなくなってしまいます。
不動産を売却する場合、不動産の所有者全員の同意が必要になります。
実務上、この所有者全員の同意は、不動産の名義の書き換えの際に「実印を押印した書類」と「印鑑証明書」を法務局に提出することによっておこないます。
相続人が増加した場合の注意点として最も重要なのが、相続人のうちの1人でも不動産の売却に反対すると、売却すること自体が出来なくなってしまうことです。
また、連絡が取れない相続人がいる場合も所有者全員の同意を得たとはいいきれず、その不動産を売却することは出来ません。
このように、せっかくの財産も対策を考えずに放置してしまうと、その価値を十分に活かすことができなくなってしまいます。
そこでこのようなケースの対策として考えられるのが家族信託です。
家族信託の概要については別記事で詳しく書きましたので参考にしてください。
家族信託とは委託者が保有する財産を受託者に託し、受託者が受益者のために財産の管理・処分を行う契約で民事信託の一種です。
鈴木さん(40歳会社員)には地方の実家に暮らす75歳の父がいます。「最近、父が同じことを何度も言うようになった」と母から知らされ認知症リスクを感じるようになった鈴木さん。鈴木さんの父親と母親は夫婦二人暮らし。それなりの貯蓄と年金収入がありますが、認知症になったときの施設の入居費用や介護費用には不安があります。
鈴木さんはできれば実家の土地建物を売却し、介護費用を捻出したいと考えています。
なお鈴木さんには45歳の姉がいます。不動産意外の財産は現金1000万円です。
父親が認知症になってしまうと資産が凍結されるので、その前に対策を打つ必要があります。
父親が施設に入居すれば、実家は母親一人で暮らすには広すぎ、一人暮らしにより母親も介護が必要になったり、認知症になったりして空き家になる恐れがあります。
次のように家族信託を使った解決方法を提案しました。
信託目的:認知症発生後、自宅を処分し、介護費用として父親をサポート
委託者:父親
受託者:長男(鈴木さん)
第2受託者:姉
受益者:【設定時】父親→【相続発生後】母親
信託財産:自宅・・・土地と建物
現金・・・1000万円
信託終了時期:父親・母親のどちらも亡くなったとき
この信託契約を交わすことで、父親が認知症を患っても、鈴木さんは自宅を管理・処分することができます。父親が亡くなっても、受益者は母親となって契約は継続します。仮に母親もまた認知症を患っても、プランに影響を受けることはありません。鈴木さんとその両親、それぞれが将来の介護費用の心配を取り除くことができました。
また将来的に、物件を第三者に賃貸していた場合、借地権割合、借家権割合によって評価がさらに下がります。相続税対策としても有効になります。
既に実家が空き家になっている場合は勿論ですが、親御さんが認知症になりかけているという方に家族信託の活用は有効です。家族信託を利用することで、認知症にかかった後も財産を親族に託し、売却・その後の運用を家族の要望通りに行えます。空き家対策・相続対策として効果的な制度です。
高齢化が進行している現代、空き家や相続に関わる問題は今後も増え続けることが予想されます。
また税制改正によって、これまで相続税に縁のなかった方の税負担が増えています。
空き家の売却・収益物件化は、財産の節税対策としても今後さらに有効になっていくと考えられます。
高齢期に差し掛かる親を持つ方、今回ご紹介した家族信託の活用と収益物件を利用した節税対策に関して、一度検討してみてはいかがでしょうか?
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